洗礼されたシンプルな佇まいに、柔らかな雰囲気を感じるWORKSさんの建築たち、自然素材にこだわり、女性建築家ならでは心遣いを感じる空間が印象的です。住宅はもちろん、保育園や店舗も手掛けられているWORKSさん。
今回は、木造の住まいにこだわり、家づくりを手掛けてきたmarumakahomeと共につくりあげる新たな住まいの基礎”よつば構造”について詳しくお話を伺いました。
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洗礼されたシンプルな佇まいに、柔らかな雰囲気を感じるWORKSさんの建築たち、自然素材にこだわり、女性建築家ならでは心遣いを感じる空間が印象的です。住宅はもちろん、保育園や店舗も手掛けられているWORKSさん。
今回は、木造の住まいにこだわり、家づくりを手掛けてきたmarumakahomeと共につくりあげる新たな住まいの基礎”よつば構造”について詳しくお話を伺いました。
m a r u n a k a
今回のプロジェクトから生まれた“よつば構造”について、お話をお聞かせください。
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W O R K S
marunowaブランドの住まいをつくるにあたり、まずはマルナカメンバーの想う豊かな暮らしについてヒアリングをしたときに、「外構と一体化した建物、すまい、くらし」という声が多かったことが印象的でした。コロナ禍にはじまったプロジェクトでもあったので、家での時間をいかに豊かにするかというところは共通の認識を持ちやすかったと思います。
通常、断熱など省エネに考慮すると、どうしても窓を小さくしてゆく傾向にありますが今回は、外構と一体になって自然を取り込みつつ、植物で日差しや熱をコントロールできるような窓の取り方ができないかなと考えたことがスタートです。街角に植栽がひろがり、そこに向かって窓が開いている暮らしやインテリアをイメージしました。
cap(マルナカホームの皆さんと一緒に、理想の住まいを模索しました。確かに、内に居ながらも外との隔たりが曖昧な、開放的な家が多い印象。)
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W O R K S
また、わたしたちが普段木造の建築を設計する際に気をつけているポイントとして、構造的にシンプルに、改修しやすく長持ちする家づくりにしたいというのは大前提なのですが、もうひとつちょっとしたコツに、建物の隅は引き抜き力が大きくなるので、耐力壁の量として余裕があれば、隅には耐力壁を配置しない、ということがあります。
建物の四隅を耐力壁でかためたほうが強い家になると思っている方は設計者含めて意外と多いです。四隅に壁がないほうがよいということでもないのですが、隅のほうが柱への引き抜き力は大きくかかるので、ホールダウン金物のサイズはとても大きくなります。それであれば、おもいきって角を開けるということをルールにしてみて、生まれる空間や外とのつながりを楽しむことのできる家をつくってみようというイメージです。
構造的な根拠と、外構と一体化したコーナー窓のイメージが重なり、“よつば構造”のアイデアとなりました。
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m a r u n a k a
WORKSさんの発想から、断熱や耐震等級3という根幹的な強さをクリアしながらも、余白を感じるしなやかな住まいのアイディアが生まれてきたのですね。
実際作り手であるmarunakahomeの皆さんは、これまでも様々な家づくりをしているなかで、“よつば構造”という新たな構造はどんな印象を憶えましたか。
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m a r u n a k a h o m e
やはり、私たちも通常、家づくりをする際は四隅を固めるというものが基本でしたが、四隅を開口部にするという家づくりの発想には新しさを憶えました。
今回のプロジェクトのコンセプトに“自然に還る心とからだ”というものがあるように、外構との一体感を感じる住まいをテーマに置いていることもあったので、角に窓辺がある景色は暮らしの中の画になることが思い描けます。
そういったことから“よつば構造”という、新たな構造に可能性を感じましたね。
cap(WORKSさんのよつば構造アイディアノートから)
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m a r u n a k a
WORKSさんの発想から、断熱や耐震等級3という根幹的な強さをクリアしながらも、余白を感じるしなやかな住まいのアイディアが生まれてきたのですね。
では実際に、“よつば構造”の住まいでの暮らしはどういった点がポイントになるのでしょうか。
W O R K S
まずは一番大切なコンセプトとして、住まいの可変性を意識しました。動かすことのできない構造壁を凹凸の部分の外壁と階段、水廻りに配置することで、そのほかの壁がフリーに動かせるようになり、ライフスタイルの変化にも柔軟に変化できる作りになっています。
住まわれるご家族のためにも、地球のためにも、長く住み続けられ、永く住み継げられるような家でありたいと思っています。
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m a r u n a k a
建築家だからこそ、変わらない空間を追求するのかと考えていましたが、反対なのですね。柔軟に変化できるからこそ、人も家も無理なく長く続いてゆくことが出来る。
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m a r u n a k a h o m e
木造の新築・リノベーションを行ってきた私たちからしても、やはりそれぞれのお施主様がいつまでも心地よく暮らせることを追求していたいと思っているので、可変性のある柔軟な住まいには大変共感を憶えました。ディティールの美しさは勿論ですが、家は住まう人と共に成長するもの。暮らしの変化に柔軟に、長く続いてゆく住まいこそ、本当の良い住まいになると思いますね。
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m a r u n a k a
これが住まいを造る者同士の哲学ですね…感動しました…
m a r u n a k a
では、そのうえでの“よつば構造”のポイントはどのようなものになるのでしょうか。
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W O R K S
“よつば構造のポイント”は大きく3つあります。
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1.外構との一体感を
街角が豊かだと、街並みが彩られるなと思っていて、植栽や窓のしつらえのよい街角をみつけると、嬉しくなります。植栽の隙間から家の中の灯りがこぼれると、まちに人の気配も同時にこぼれて、防犯的にも安心感がうまれます。
街を彩りつつ、家にいながら自然を感じる自然や地球との一体感をつくりだします。
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m a r u n a k a
住まいや家族単体で考えるのではなく、住まいの建つ土地や地域との繋がりへと視野を広げた家づくりをされているWORKSさんの、思いやりですね…
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2.四隅の窓
家の中でも角というのは居場所になりやすく、そこに窓があることで、小さなお気に入りの居場所をつくることができます。絵本ベンチだったり、小さな書斎だったり、お庭をながめる大きな窓にもなります。
隅に空気が溜まらないので、常によい「気」が流れる家にもなり、一石三鳥くらいです。
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3.凸凹のおもいやり(収納)
大きな窓をとりつつ、耐震等級もあげるという構造的課題を解決しつつも、収納をしっかりとれる家にするために、強度を保つための分厚い耐力壁の凸凹を利用して、収納部にしました。
やはり、収納は心地よい暮らしの基本です。
家にあるもの全てに住所を決めてあげると、片付けのストレスも軽減します。
スペースや使い勝手にあわせて、オープンな棚にしたり、全面扉をつけたり、お好みにカスタマイズできるのも楽しいですよ。
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m a r u n a k a
問いからはじまる家づくり、WORKSさんの家づくりには、住まいの先にある人と家族、自然との共生、地域との繋がりを感じるシンプルながらも豊かな暮らしが描かれていました。
木造の住まいを通し、お客様に寄り添ってきたmarunakahomeと共に、一年半の構想期間を経て生まれた新たなブランド、marunowa Mysaの住まい。
次回はmarunowa Mysaの住まいについてご紹介していきたいと思います。